2013年4月24日水曜日

問題小説:鏡さん、この世で一番きれいなのは誰 P9

「このオバサン頭いかれてんじゃないの」
 森川由美はこの言葉を聞いてキレた。
「私は森川由美よ」
 由美は大声でこう言った。この言葉にひれ伏すと思ったのだ。
だが、
「森川由美って誰」
 と二人は言葉を返した。
「あなた知っている」
「知らないよ」
 二人は顔を見合わせて、
「やっぱりこの人頭イカレているよ」
 と若い女は男の手を取って去っていった。
森川由美の名前は忘れ去られていたのだ。
由美は言いようの無い虚無感に襲われた。
「人生とはこんなに虚しいものなのか」
 気がついたら公園で浴びるほどウイスキーを飲んでいた。

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