「このオバサン頭いかれてんじゃないの」
森川由美はこの言葉を聞いてキレた。
「私は森川由美よ」
由美は大声でこう言った。この言葉にひれ伏すと思ったのだ。
だが、
「森川由美って誰」
と二人は言葉を返した。
「あなた知っている」
「知らないよ」
二人は顔を見合わせて、
「やっぱりこの人頭イカレているよ」
と若い女は男の手を取って去っていった。
森川由美の名前は忘れ去られていたのだ。
由美は言いようの無い虚無感に襲われた。
「人生とはこんなに虚しいものなのか」
気がついたら公園で浴びるほどウイスキーを飲んでいた。